第二章:MMAの歴史から現在まで、2500年続く戦いの進化と深化
MMAのルーツ
「いつからこんなスポーツあったの?」「MMAって最近出てきた格闘技なんじゃないの?」と思ったあなた、実は結構歴史があるんです。
目次
- MMAのルーツ
- プロフェッショナリズムの確立
- 日本MMAの復活
- MMAが変えた格闘技界と社会
- 2500年続く最強への探求
古代ギリシャ・パンクラチオン
近代の発展
近代MMAの誕生と発展
日本が世界の中心だった時代
PRIDEの終焉
UFCの歴史
ルールの進化 – 野蛮から洗練されたスポーツへ
格闘技界のゲームチェンジャー
パンデミックを乗り越えて
古代ギリシャ・パンクラチオン
現代のMMA(総合格闘技)のルーツを
当時、ギリシャで行われていた「パンクラチオン(Pankration)」こそが、現在のMMAの直接的な祖先と言える格闘技だったんです。
また、パンクラチオンという名前は、ギリシャ語の「パン(すべて)」と「クラトス(力・支配)」を組み合わせた言葉で、文字通り「すべての力」を意味しているそうです。
- 打撃と組み技がOKな「死闘系」競技。
- ルールほぼナシ、目潰しと噛みつきだけ禁止。
もうこの時点で現代MMAっぽいですね(笑)
なぜなら、ボクシング(ピュグマキア)やレスリング(パレー)という単一の技術体系ではなく、あらゆる格闘技術を統合した「総合格闘技」だったからです。
さらに、興味深いことにパンクラチオンの試合は現代のMMAと驚くほど似ていて、立ち技での打撃戦から組み技に移行し、最終的に地面での攻防で勝負が決まることが多かったんです。
勝利条件も、相手を失神させるか、降参の意思表示をさせるかのどちらか。
また、古代オリンピックで最も有名なパンクラチオン選手の「ソストラトス(Sostratos)」は、「指折り魔」の異名を持ち、相手の指を折って降参させる技術で12年間無敗を
しかし、ローマ帝国の拡大とキリスト教の普及により、パンクラチオンは「
それから約1600年間、真の総合格闘技は歴史の闇に
近代の発展
一方、パンクラチオンの消失後、格闘技は各地域で独自の発展を
日本では「柔術」、中国では「拳法」、ヨーロッパでは「ボクシング」や「レスリング」といった具合に、それぞれが専門化していきました。
そして、19世紀末から20世紀初頭にかけて、ブラジルで「Vale Tudo(ヴァーリ・トゥード)」と呼ばれるルール無用の格闘技が誕生し、「柔術 vs 空手」、「カポエイラ vs レスリング」、リアルな異種対決が人気になり、現在のMMAの基盤となりました。

出典:前田 光世
20世紀初頭、一人の日本人武術家が世界の格闘技史を大きく変えることに…「前田
彼は「柔道」と「柔術」の技術を

1914年、前田はブラジルで「エリオ・グレイシー(Hélio Gracie)」に柔術を教授したのです。
ちなみに、エリオは体格的に恵まれていなかったため、力に頼らない技術を追求し、独自の「ブラジリアン柔術(BJJ)」を創り上げ、現代MMAの技術的基盤となりました。
グレイシー一族は「グレイシー・チャレンジ」と呼ばれる異種格闘技戦を積極的に行い、ブラジリアン柔術の有効性を証明し続けた結果、1993年…この技術が世界に衝撃を与える舞台が用意されたんです。
近代MMAの誕生と発展

出典:佐山 聡
日本では、1985年に初代タイガーマスクの「佐山
そして、1993年11月12日、コロラド州デンバーで開催された「UFC1」は、古代パンクラチオン以来の真の総合格闘技を現代に
「どの格闘技が最強か?」という、人類が2500年間抱き続けてきた疑問に、ついに科学的な答えが出されたんですッ!!

体重93kgの細身のブラジリアン柔術家、「ホイス・グレイシー(Royce Gracie)」が、
自分より30kg以上重いスモウレスラーやボクサーたちを次々と関節技で下していく光景は、世界中の格闘技ファンに衝撃を与え、古代ギリシャのパンクラチオン選手たちが証明した「技術は力に勝る」という真理が、現代に
この大会は、単なるスポーツイベントを超えて、格闘技の
また、日本でも異種格闘技戦ブームが巻き起こり、「K-1」や「パンクラス(PANCRASE)」といった団体が設立され、皮肉にも、古代ギリシャで生まれた、日本武術の影響を受けて進化した格闘技が、再び日本の地で花開くことになったんです。
そして、テレビで放送される格闘技番組は軒並み高視聴率を記録!!
格闘技は、一大エンターテイメントとして定着していきました。
日本が世界の中心だった時代
1997年、「PRIDE」が誕生!
東京ドームに4万7000人!!

出典:髙田 延彦

「高田
そして、2000年代に入ると、日本の「PRIDE」が世界最高峰のMMA団体として君臨!
さいたまスーパーアリーナを埋め尽くす観客、
PRIDEは格闘技を「芸術」の域まで押し上げる存在になりました。

出典:桜庭 和志
この時代の象徴的存在が「
「グレイシーハンター」の異名を持つ桜庭は「ホイラー・グレイシー(Royler Gracie)」「ホイス・グレイシー(Royce Gracie)」「ヘンゾ・グレイシー(Renzo Gracie)」そして「ハイアン・グレイシー(Ryan Gracie)」を次々と撃破!
日本人の誇りを背負って戦う姿は、多くの日本人ファンの心を掴んだんですッ!

出典:エメリヤーエンコ・ヒョードル(Emelianenko Fedor)

出典:五味 隆典
さらに、ロシアから現れた最強の男、「エメリヤーエンコ・ヒョードル(Emelianenko Fedor)」、冷静沈着な表情の裏に秘められた爆発的な闘争本能で、28連勝という驚異的な記録を打ち立て、「絶対王者」という
日本人選手たちも世界トップレベルで活躍!!
「
PRIDEの終焉
PRIDEの
PRIDEはなんとか活動を継続しようとしましたが、最終的には存続が困難となり、2007年3月、アメリカの総合格闘技団体「UFC」を運営するズッファ(Zuffa)社が、PRIDEを買収したことが発表され消滅することになりました。


そして、MMAの中心は再びアメリカに移り、UFCはリアリティ番組「ジ・アルティメット・ファイター(The Ultimate Fighter)」で新たなスターを発掘し、「チャック・リデル(Chuck Liddell)」や「ティト・オーテイズ(Tito Ortiz)」といったカリスマ選手を前面に押し出してメインストリーム化を図っていきました。

出典:ジョルジュ・サンピエール(Georges St-Pierre(GSP))
この時期のMMAは技術的にも大きく進歩し、初期の「一つの格闘技のエキスパート」から、打撃・組技・寝技すべてを高いレベルでこなす「総合格闘家」への進化が始まりました。
「ジョルジュ・サンピエール(Georges St-Pierre(GSP))」は、その完璧なまでの総合力で長期間王座に君臨し、「完全なる格闘家」の理想形を体現!
UFCの歴史
2001年のズッファ(Zuffa)社によるUFC買収は、総合格闘技界の歴史において非常に重要な転換点となりました。
「ロレンゾ・フェティータ(Lorenzo Fertitta)」と「ダナ・ホワイト(Dana White)」が中心となって行われたこの買収について、詳しく説明します。
「UFC(Ultimate Fighting Championship)(アルティメット ファイティング チャンピオンシップ)」は1993年に設立された総合格闘技団体ですが、初期は「ノー・ホールズ・バード(No Holds Barred)(何でもあり)」というコンセプトで、過激な内容から「人間闘犬」と
そんな中、2001年1月にラスベガスのカジノ経営者である「ロレンゾ・フェティータ(Lorenzo Fertitta)」と「フランク・フェティータ三世(Frank Fertitta Ⅲ)」兄弟が、当時UFCを所有していた「Semaphore Entertainment Group(セマフォー・エンターテインメント・グループ)(SEG)」 からUFCを買収しました。
この買収のために設立されたのが「ズッファ(Zuffa, LLC)」社です。「ズッファ」はイタリア語で「戦い」や「取っ組み合い」を意味します。
買収金額は、200万ドル(約2億円)で、当時のUFCの状況を考えると、決して安くない金額でしたが、その後のUFCの成長を考えると、非常に安価な投資であったと言えます。現在(2025/07)のUFC企業価値は約120億ドル(約2兆円)になっています。
そして、この買収劇の中心には、「ロレンゾ・フェティータ(Lorenzo Fertitta)」と「ダナ・ホワイト(Dana White)」という二人のキーパーソンがいました。

出典:ロレンゾ・フェティータ(Lorenzo Fertitta)
ラスベガスのカジノ大手「ステーション・カジノ(Station Casinos)」を経営するフェティータ一族の一員で、UFC買収後は「ズッファ(Zuffa)社」のCEOに就任し、UFCの経営面を統括しました。
ビジネス手腕に長け、UFCを合法的なスポーツとして確立し、ビジネスとして成功させるための戦略を練りました。
特に、ラスベガスでのカジノ経営で培った人脈やコネクションを活かし、ネバダ州アスレチックコミッションなどと協力して、UFCのルール整備や認可獲得に尽力しました。

また、「ダナ・ホワイト(Dana White)」と「ロレンゾ・フェティータ(Lorenzo Fertitta)」は高校時代の同級生で、長年の友人で、UFC買収以前は、総合格闘技選手のマネージャーを務めており、UFC内部の状況にも精通していました。
ダナ・ホワイト(Dana White)自身が大の格闘技ファンであり、UFCの可能性を信じていて、フェティータ兄弟にUFCの買収を持ちかけたのはダナ・ホワイト(Dana White)と言われています。
買収後はUFCの社長に就任し、団体の実務とプロモーション、選手育成などを担当しました。
彼の情熱的なプロモーションと、時には過激とも取れる発言は、UFCの知名度向上に大きく貢献しました。
買収後のUFCの発展
また、「ズッファ(Zuffa)」社によるUFC買収後、以下の点がUFCの成長に大きく
①ルールと安全性の整備
「ズッファ(Zuffa)社」は、総合格闘技を「スポーツ」として確立するため、統一ルールの導入や安全対策の強化に積極的に取り組みました。これにより、多くの州でUFCの開催が認められるようになり、一般的なスポーツとしての認知度が高まりました。
②テレビ放送の拡大
「ジ・アルティメット・ファイター(The Ultimate Fighter =
③他団体の買収
「PRIDE」「WEC」「Strikeforce」といった他の主要な総合格闘技団体を買収・統合することで、多くの人気選手をUFCに集約し、UFCの地位を確固たるものにしました。
④世界的な拡大
アメリカ国内での成功を足がかりに、UFCは世界各国で大会を開催し、国際的なブランドへと成長しました。
このように、ロレンゾ・フェティータ(Lorenzo Fertitta)とダナ・ホワイト(Dana White)、そしてズッファ(Zuffa)社による200万ドルのUFC買収は、破産寸前だった団体を、わずか20年で100億ドル(約1兆円)を超える価値を持つ巨大なスポーツエンターテイメント企業へと
そして、UFCは世界にも知れ渡る、MMA界の頂点に立つ程に成長しました。
UFCとWWEの統合
2023年4月、UFCの親会社である「エンデバー(Endeavor)」が「WWE」を93億ドル(約1兆2400億円)で買収することで合意し、2023年9月12日に正式に統合が完了しました。
この統合により「TKOグループ・ホールディングス(TKO Group Holdings)」という新しい上場企業が設立され、ニューヨーク証券取引所で株式が取引されています。
さらに、統合後の所有比率は、「エンデバー(Endeavor)」が51%の支配的持分を、「WWE」株主が49%を保有する形となり、「エンデバー(Endeavor)」は実質的に「WWE」をコントロールし、「UFC」に対する支配も継続しています。


新会社では、「エンデバー(Endeavor)」の「アリ・エマニュエル(Ari Emanuel)」氏がCEOに就任し、WWE創設者の「ビンス・マクマホン(Vince McMahon)」氏はエグゼクティブ・チェアマンとなりました。
UFCの「ダナ・ホワイト(Dana White)」代表は引き続きUFC社長を務め、WWEの「ニック・カーン(Nick Khan)」CEOがプロレス事業の社長に就任しています。
加えて、「TKOグループ・ホールディングス(TKO Group Holdings)」は2023年の売上高が17億ドル(約2554億円)に達し、前年比47%増という驚異的な成長を記録し、プロレス団体「WWE」と総合格闘技団体「UFC」を運営するTKOグループは驚異的な売り上げを記録!
同社は約170カ国で9億人以上にコンテンツを配信しており、「WWE」のYouTube登録者数は約1億人に上ります。
この統合により、格闘技とプロレスの世界最大級の2大エンターテインメント企業が一つの会社として運営されることになり、シナジー効果による更なる成長が期待されています。
プロフェッショナリズムの確立

MMAが競技として成熟、そしてUFCが世界市場を
ルールの進化 – 野蛮から洗練されたスポーツへ
かつて「血まみれの見世物」と呼ばれたUFC(総合格闘技)は、現在ではオリンピック競技候補として議論されるほど洗練されたスポーツへと劇的な変化を遂げました。
この変化の背景には、ルールの体系化、安全性の向上、そして競技としての公正性の追求がありました。
統一ルールの確立
2000年、ニュージャージー州アスレチック・コミッションが中心となって、MMAの統一ルールが制定されました。
これまで「なんでもあり」の印象が強かった競技に、明確な枠組みが設けられたのです。
【主な変更点】
- 31項目の反則行為を明確に定義
- 5分3ラウンド制(タイトル戦は5ラウンド)の採用
- 体重別階級制の導入で公平性を確保
- 選手の安全を最優先に考慮した試合運営
判定基準の進化
判定基準も時代とともに大きく変化しました。この変化は、より実際の格闘技らしい評価を目指したものでした。
【2000年代初期】
- コントロール重視の判定
- グラウンドでのポジション維持が高評価
- テイクダウンの成功が重要視される
【2016年の大幅改正】
- ダメージ重視の判定基準に変更
- 「有効打撃」の定義をより明確化
- 縦肘(12-6エルボー)の部分的解禁
- 実際に相手にダメージを与える攻撃を高く評価
薬物検査の徹底強化
競技の公正性を保つため、薬物検査システムが大幅に強化されました。
- USADA(アメリカアンチドーピング機構)の導入効果
- 24時間365日の抜き打ち検査実施
- EPO(エリスロポエチン)、テストステロンなど禁止薬物の厳格な取り締まり
- 違反者への厳重な処罰(出場停止、罰金等)
- 選手の健康と競技の公正性を同時に確保
また、UFCは、単なる格闘技の枠を超えて「安全性」「公正性」「競技性」を兼ね備えた現代スポーツへと進化しました。
かつての「野蛮な見世物」というイメージは過去のものとなり、今では世界中で愛される洗練されたスポーツとして確立されています。
この進化は、関係者の絶え間ない努力と、選手の安全と競技の質を両立させる革新的な取り組みの結果で、今後もMMAは、より安全で公正な競技として発展を続けて行くことでしょう。
格闘技界のゲームチェンジャー

さらに、2010年代に入ると、スーパースターを生み出すほか、先駆けて女性ファイターのスターを発掘!!
女子MMAの開拓者「ロンダ・ラウジー(Ronda Rousey)」は、柔道仕込みの投げ技と関節技で次々と相手を秒殺!
女性格闘家として初めて真のスターダムに駆け上がり、ハリウッド進出まで果たした。
そして、アイルランドから一人の男が現れた… 「コナー・マクレガー(Conor McGregor)」。
彼は格闘技における「キャラクター」の重要性を世界に知らしめた革命家だった。

「Notorious(ノートリアス)(
試合前の煽りから豪華なライフスタイル、SNSでの発信まで、すべてが計算されたブランディング戦略。
「俺は予言者だ。なぜなら俺の予言は必ず現実になるからだ」
このような挑発的な発言で注目を集め、2016年にはUFC史上初の二階級同時王者となりました。

出典:フロイド・メイウェザー(Floyd Mayweather)
そして2017年、ボクシング史上歴代2位の430万件を売上、約5億5000万ドル(約700億円以上)のPPV売上を記録した「フロイド・メイウェザー(Floyd Mayweather)」戦では、格闘技の枠を超えた世界的なスーパースターであることを証明し、現代の格闘家にとって「強さ」だけでなく「魅せ方」も重要であることを証明し、SNS時代における新しいスター像を確立しました。
パンデミックを乗り越えて
2020年3月、新型コロナウイルスのパンデミックにより、世界中のスポーツが軒並み中断されました。
オリンピック、サッカーのワールドカップ予選、NBA、MLB、NFL、テニスの四大大会など、あらゆる競技が開催延期や中止を余儀なくされる中、格闘技界も同様の危機に直面していました。
UFCの革新的な対応
UFCのダナ・ホワイト代表は、他のスポーツ組織が
それが「ファイトアイランド」構想です。アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビにあるヤス島を舞台に、完全にコントロールされた環境下で格闘技大会を継続するというものでした。
世界への影響と意義
自粛生活を
家にいながらにして、トップアスリートたちの真剣勝負を目撃できることで、閉塞感の中にあった多くの人に興奮と希望を提供しました。
スポーツ業界への先導的役割
UFCの成功は、他のスポーツ組織にとって重要な前例となり、厳格な感染対策を講じれば、パンデミック下でも安全にスポーツイベントを開催できることを実証し、後にNBAのバブル方式やサッカーリーグの再開などにも影響を与えました。
選手のキャリア継続
多くのプロスポーツ選手が競技機会を失う中、UFC選手たちは継続的に試合を行うことができ、キャリアの中断を最小限に抑えることができました。これは選手の生活基盤を守る上でも重要な意味を持ちました。
長期的な影響
ファイトアイランドの成功は、スポーツイベントの開催方法に新たな可能性を示し、従来の大規模会場での観客動員に依存したモデルから、配信中心の新しいエンターテインメント形態への転換点となり、現在のスポーツビジネスの多様化にも繋がっています。
この取り組みは、危機的状況下でのリーダーシップと革新的思考の重要性を示す象徴的な出来事として、スポーツ史に刻まれることになったのです。
日本MMAの復活

一方、2007年のPRIDE終了は、日本格闘技界に深い傷跡を残しました。
かつて世界最高峰と
この空白期間において、日本の格闘技ファンは海外の試合を追いかけるか、過去のPRIDEの名勝負を振り返るしかない状況が続いていました。
国内の格闘技団体は小規模なものが散発的に開催されるのみで、かつてのような大規模イベントや社会現象となるようなスター選手の登場は皆無に等しかったのです…。
RIZINと新世代の台頭

出典:榊原 信行
そして2015年、この沈黙を破ったのが「
榊原氏はPRIDE時代から格闘技プロモーションに
RIZINの戦略は多角的で、大晦日の「RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX」を軸とした年間スケジュールの確立。
次に、従来の格闘技ファン層だけでなく、若年層や女性層へのアプローチ。
そして、最も重要だったのが、「SNS(X)、(Instagram)、(YouTube)、(TikTok)」のデジタルプラットフォームを活用した新しいファン獲得戦略でした。

出典:朝倉 未来

出典:朝倉 海
YouTubeチャンネル「朝倉未来 Mikuru Asakura」は登録者数300万人超え、「KAI Channel / 朝倉海」チャンネルは100万人超えのインフルエンサーであり、格闘技とエンターテイメントの境界を
朝倉兄弟の成功は、格闘技とエンターテイメント、そしてデジタルメディアの融合を象徴することになりました。
彼らはリング上での戦いだけでなく、「YouTube」「Instagram」「TikTok」といった様々なプラットフォームでファンとの接点を持ち続けることで、格闘技に興味のなかった層も取り込み、RIZINの観客動員数増加に大きく貢献。
さらに、スポンサー企業にとっても魅力的な存在となり、格闘技界全体の商業価値向上にも
MMAが変えた格闘技界と社会

1993年、アメリカのデンバーで開催された第1回UFC(Ultimate Fighting Championship)は、格闘技史における革命の始まりでした。
異なる格闘技の代表者が「どの格闘技が最強か」を決めるために戦ったこの大会は、その後30年間で単なるスポーツの枠を超え、現代社会に深い影響を与える文化現象へと発展しました。
技術的革新
MMAの最大の革新は、従来の格闘技界に存在していた「流派の壁」を取り払ったことです。
「柔道」「レスリング」「ボクシング」「ムエタイ」「ブラジリアン柔術」など、それぞれが独立して発展してきた格闘技が、オクタゴンという舞台で融合し、全く新しい戦闘スタイルを生み出されました。
初期のUFCでは、各格闘技の代表者が自身の専門分野で戦っていましたが、ホイス・グレイシーがブラジリアン柔術で体格差を
この発見が、現在のMMAファイターが持つ総合的な技術体系の基礎となりました。
現代のMMAファイターは、立ち技(ストライキング)、組み技(グラップリング)、寝技(グラウンド)すべてにおいて高いレベルを要求される他、従来の格闘技では考えられなかった多面的な身体能力の発達を
エンターテイメント化
従来の格闘技は、技術的な優劣を競う競技として位置づけていました。
しかし、MMAは試合そのものだけでなく、選手の個性、背景にあるストーリー、演出すべてを統合したエンターテイメントとして発展。
この変化を象徴するのが、「コナー・マクレガー(Conor McGregor)」の存在です。
彼は卓越したファイターであると同時に、優れたエンターテイナー。
試合前の挑発、独特のファッションセンス、メディア対応のすべてが計算されたパフォーマンスとして機能し、格闘技を「総合芸術」の領域に押し上げました。
UFCは各試合に物語性を持たせることで、観客の感情移入を促進。
選手の生い立ち、挫折と復活、ライバルとの因縁など、映画的な要素を取り入れることで、格闘技を単なるスポーツから壮大な人間ドラマへと昇華。
この手法は、従来のスポーツ中継の概念を変革し、現在では他のスポーツにも広く採用され、選手の人間性や背景を丁寧に描くことで、観客は技術的な理解を超えた深い共感を覚えるようになりました。
グローバル化
MMAは世界各地の格闘技文化を統合し、真の意味でのグローバルスポーツとして発展。
UFCは現在190カ国以上で放送され、世界中の観客が同じ興奮を共有。
この国際的な展開により、各国の格闘技文化が相互に影響し合い、新たな技術や戦略が生まれました。
例えば、日本の「寝技」、タイの「ムエタイ」、ロシアの「サンボ」、ブラジルの「柔術」などが融合し、地域を超えた技術的進化を促進しました。
MMAのリングには、あらゆる国籍、宗教、文化的背景を持つ選手が登場します。
この多様性は、スポーツが持つ人類共通の価値観を体現。
言語や文化の違いを超えて、純粋な技術と精神力で勝負する姿は、現代社会における理想的な競争の形を示しています。
社会的影響
MMAは「強さ」の概念を根本的に再定義しました。
従来の格闘技では、特定の技術や体格が重視される傾向でしたが、MMAでは多様なスタイルと個性が成功への道筋となることが証明されました。
この変化は、社会全体の多様性に対する理解を深める効果をもたらし、異なる背景を持つ人々が同じ土俵で競い合い、それぞれの強みを活かして成功する姿は、現代社会における包容力の重要性を示しています。
「ロンダ・ラウジー(Ronda Rousey)」の登場は、女性格闘技界に革命をもたらしました。


出典:ヴァレンティーナ・シェフチェンコ(Valentina Shevchenko)
女性の成功により、女性MMAファイターの社会的地位は劇的に向上し、多くの女性が格闘技に挑戦するきっかけとなり、現在では「アマンダ・ヌネス(Amanda Nunes)」「ヴァレンティーナ・シェフチェンコ(Valentina Shevchenko)」など、男性選手と同等の注目を集める女性チャンピオンが数多く存在しました。
この変化は、スポーツにおける性別の壁を取り払い、女性の社会進出を象徴的に表現しています。
格闘技という伝統的に男性が支配的だった分野で、女性が主役として活躍する姿は、社会全体のジェンダー平等意識の向上に
2500年続く最強への探求

古代ギリシャのパンクラチオンから始まり、1993年の「UFC1」で現代に
技術の進歩、エンターテイメントの進化、そして社会的意義の拡大。
MMAは単なるスポーツを超えて、人類の闘争本能と技術革新の結晶となりました。
古代ギリシャの哲学者たちが「最も完全な格闘技」と呼んだパンクラチオンの精神は、現代のオクタゴンでも脈々と受け継がれ、立ち技、組み技、寝技すべてを駆使して戦う現代のMMAファイターたちは、古代ギリシャの戦士たちと同じ魂を持っていると思います。
だから、格闘技を知らない人も、元々のファンの方も、見れるインフラが整っている今、気軽に観戦できるのでさらに、そしてまたMMAに注目し、観戦してみて下さい。
なぜなら、MMAは今もなお、進化し続けているんですッ!
次の10年で何が起こるかは誰にも分からないですが、確実に言えることは、MMAが私たちに驚きと感動を与え続けるということです。
リングの中で繰り広げられるのは、ただの試合ではないく、人間ドラマであり、技術の芸術であり、そして夢と挫折の物語。
興味が出た、あなたもMMAの世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょうか?
きっと、これまで知らなかった「強さ」と「美しさ」に出会えるはずです。