【UFC 324結果】ゲイジーがパディに教えた「残酷な現実」
- 大会:UFC 324(日本時間 2026年1月25日/現地 2026年1月24日)
- 開催地:ラスベガス(T-モバイル・アリーナ)
UFC公式の試合結果はこちらで確認できます。
【UFC 324全試合レビュー】判定が示した「残酷な格差」。ゲイジーがパディに与えた25分間の教育的指導
格闘技には「幻想(Hype)」という魔物が
「この人気選手なら、きっと奇跡を起こしてくれる」
そう信じて、私たちは熱狂します。
しかし、オクタゴンという金網の中は、そんな願いが通用しない「もっとも残酷な真実の場所」です。
この夜のメインカードは、試合が進むほど“逃げ場が消える構造”でした。
最後に残るのは、人気でも勢いでもなく、積み上げた実力の総量だけ。
試合前の対戦カードまとめ記事
目次
1. 【メインイベント】ハイライトの神様が下した「判定=レベル差」という宣告
- 対戦:ジャスティン・ゲイジー vs パディ・ピンブレット
- 階級:ライト級(70.3kg)
- 種別:暫定ライト級王座戦(Interim Title)
- 結果:判定3-0(48-47, 49-46, 49-46)
- 時間:5R 5:00
- 勝者:ジャスティン・ゲイジー(Justin Gaethje)
英国のカリスマ、パディ・ピンブレットがついにトップ層に挑んだ一戦。
相手はジャスティン・ゲイジー。危険と引き換えに頂点へ登ってきた、ライト級の現実そのものです。
暴走車 vs 5ラウンド仕様の戦車
この試合は、勢いよく走るスポーツカー(ピンブレット)が、装甲も燃料も桁違いの戦車(ゲイジー)と「長距離戦」をさせられたようなものでした。
短距離なら“奇跡”が起きる。でも、5ラウンドは“積み上げた基礎”が全部出る。
前半(1〜2R)
ピンブレットは変則のリズムで崩しにいく。
ただ、ゲイジーは焦らない。相手の良さを「消す」より先に、「弱る瞬間」を待って刈り取るタイプです。
カーフキックと重いジャブが、少しずつ、しかし確実に“走り続ける燃料”を奪っていきます。
中盤(3〜4R)
試合の空気が変わるのは、いつも“派手な場面”じゃない。
小さな当たり、積み重なる圧、戻り際の一手。
その地味な積み木が、後半でいきなり壁になります。
ゲイジーは無理に倒しに行かず、練習通りのコンビネーションを淡々と叩き込む。
「勝ち筋を太らせる」動きが、こちらの呼吸を先に奪う。
終盤(5R)
最後までピンブレットは折れなかった。だからこそ、判定票が残酷です。
「粘った」のに、「覆らない」。
数字は、努力では埋まらない距離を淡々と可視化します。
初心者のためのポイント
- KOだけが“格の差”じゃない。
- 5Rの判定は、むしろごまかしが効かない「総合評価」。
- 勢いと人気は武器。でも頂点では、それだけじゃ足りない。
2. 【セミメイン】スナイパーの復活。オマリーが見せた「距離×修正力」
- 対戦:ショーン・オマリー vs ソン・ヤドン
- 階級:バンタム級(61.2kg)
- 結果:判定3-0(29-28, 29-28, 29-28)
- 時間:3R 5:00
- 勝者:ショーン・オマリー(Sean O’Malley)
「シュガー」オマリーは、派手さの奥に“精密さ”がある。
ソン・ヤドンは、爆発力と圧で相手を折りにくるタイプ。
結果は29-28が3枚並ぶ、リアルな接戦です。
闘牛士と猛牛(ただし今回は“紙一重”)
ヤドンは前に出て当てに来る。オマリーは“当たらない位置”を更新し続ける。
ここで効いたのは、距離感そのものより「ズレたらすぐ直す」修正力。
接戦でも勝ち切る選手は、ミスを放置しません。
初心者のためのポイント
- 接戦でも勝てる選手は、“危ない場面の後”に強い。
- 距離感はセンスじゃなく、試合中に更新できる「技術」です。
3. 牙を抜かれた“黒い野獣”。アコスタが見せた「怪物を倒す設計図」
- 対戦:ワルド・コルテス・アコスタ vs デリック・ルイス
- 階級:ヘビー級(120.2kg)
- 結果:2R 3分14秒 TKO(パンチ)
- 時間:2R 3:14
- 勝者:ワルド・コルテス・アコスタ(Waldo Cortes-Acosta)
ルイスはUFCのKO/TKO勝利数レコード(16)を持つ“事故メーカー”。
だからこそ相手は、正面衝突しない。
アコスタがやったのは、怪物を倒すんじゃなく「怪物が勝てる状況を作らせない」ことでした。
RPG攻略みたいな勝ち方
危険な射程に長居しない。削る。相手が
そして仕留める時は迷わず連打で終わらせる。
“力”ではなく“設計”が勝つ瞬間でした。
初心者のためのポイント
- 「一発があるから怖い」という心理こそがルイスの武器。
- アコスタは爆弾処理班みたいに距離を管理し、焦りから出るミスを一瞬で回収した。
- 正面衝突を避けるのは“逃げ”じゃなく、勝つための設計です。
4. 「元女王」を飲み込んだ、新世代の“冷徹な刃”
- 対戦:ナタリア・シウバ vs ローズ・ナマユナス
- 階級:女子フライ級(56.7kg)
- 結果:判定3-0(29-28, 29-28, 29-28)
- 時間:3R 5:00
- 勝者:ナタリア・シウバ(Natalia Silva)
元王者ナマユナスの技術か、ナタリアの勢いか。
判定票は29-28が3枚。つまり「僅差でも勝ち切った」のがナタリアです。
タイトル戦線で一番怖いのは、派手さより“落とさない強さ”。
初心者のためのポイント
- スタミナ(心肺)も強力な武器です。
- 疲れて動けなければポイントは取れない。最後まで出力が落ちない側が“僅差”を拾います。
5. 【メインカード・オープナー】秩序を破った“狂犬”。ジャン・シウバが奪った判定
- 対戦:アーノルド・アレン vs ジェアン・シウヴァ
- 階級:フェザー級(65.8kg)
- 結果:判定3-0(30-27, 29-28, 29-28)
- 時間:3R 5:00
- 勝者:ジェアン・シウヴァ(Jean Silva)
堅実で整ったアレンに対し、シウヴァは野性味と圧で飲み込むタイプ。
この試合は「秩序(アレン)」に「混沌(シウヴァ)」をぶつけ続けた3ラウンドでした。
“綺麗に勝つ” vs “強く勝つ”
アレンは積み上げ型の上手さがある。
でもシウヴァは、ラウンドの要所を取り切る“強い瞬間”を作っていった。
ジャッジはその積み重ねを評価し、判定はシウヴァへ。
初心者のためのポイント
- 格闘技は「綺麗なフォーム」より「相手に嫌なことをし続ける能力」が評価されることがあります。
- シウヴァのプレッシャーは、アレンの“教科書(プランA)”を狂わせるタイプの圧でした。
総まとめ:UFC 324が残した「3つの教訓」
- 幻想の終わり:人気があっても、5Rの現実はごまかせない(ピンブレット)。
- 距離と修正力:触れさせないだけじゃない。「直しながら勝つ」選手が強い(オマリー)。
- 設計で倒す:怪物すら「勝てる状況を作らせない」設計が、最短で勝ちを奪う(アコスタ、ナタリア、ジェアン)。
今回の大会は、派手なフィニッシュだけでなく「勝つための設計」を見せつけられる内容でした。
勝者たちは皆、相手の強みを消し、弱点を冷静に突き、最後までプランを実行していました。
格闘技は今、野蛮な殴り合いではなく、「身体を使った高度なチェス」へと進化しているんです。